2016年3月21日月曜日

(5)北米神学校事情2015-16

日本では卒業式シーズンもほぼ終わり、学年の切り替わる春休みとなっています。

しばらく前になりますが、北米神学校事情2014、で北米神学校の「認可制度」や、教派の伸張と連動する神学校生徒数のことなどを書きました。

まっ、裏事情的ネタが多かった感じですが、「北米神学校」の入門的記事を書きました。(意外とこの類の情報は日本語では少ないようです。)

その記事から一年ほど経って、「追記」を書くようなニュースに接しました。

北米最古のアンドーバー・ニュートン神学校キャンパスが売却によって閉鎖されるというのです。

既に2014年の「事情」 でも言及した「主流派の神学校の統廃合問題」が老舗中の老舗にも及んだ、という話です。(統廃合自体は名前が示すように既にあったわけですが・・・。)

こちらの記事ではイェール神学校と合併するのではないか、とされています。

最初の記事に詳しいように、入学者数の減少により、(プリンストン神学校のような運営基金となる資産が潤沢ではない)苦しい資金繰りをしている神学校は環境の変化に合わせてどんどん経営変更やプログラムを変化させていかなければならないようです。

最も身近な環境である、就職先となる「教会事情」は衰退傾向にあり、「借金を抱えていない、パートタイムでもよい」卒業生を雇用条件にしている教会が多くなっているようです。当然神学校側もそれに合わせたプログラムを模索する必要があります。


(それからまたしばらく経って)
ニューヨーク・タイムズ「宗教欄」のマーク・オッペンハイマー記者がつい先日(2016年3月18日)このような興味深い記事を書いています。

それによれば、かなりラディカルな対応をしている神学校もあるようです。

クレアモント・リンカーン大学はメソジスト系のクレアモント神学校から派生して出来た学校で、本部ビルはありますがそれは運営のためのもので、クラスはすべてオンラインによるのだそうです。

三つの分野で修士プログラムを提供しています。
 (1)倫理的指導力
 (2)宗派間活動
 (3)社会への影響

これらのコースワークの中心は、多元社会を見据えた「対話能力」養成であり、伝統的な宗教知識(聖書その他)の涵養は敢えて要求しません。

オッペンハイマーの記事では、このようなラディカルな取組みの背景として、神学校入学者数の激減や、入学者の高齢化、それに伴う経営環境の厳しさ、等を挙げています。
(その一例としてアンドーバー・ニュートン神学校のことも取り上げられています。)


しばらく前『牧師は神学者か?』を連載しましたが、そのうちのデーヴィッド・フィッチの機能的神学者論辺りと比較していただくと、メインラインの神学校と福音派系の神学校の「環境の変化」の捉え方、それに対する戦略の違い・・・など興味深い点が出てくると思います。


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