The New Conversion: Why We 'Become Christians' Differently Today
を要約・粗訳し終って感じていたのは、いささか大風呂敷であることと(紙面の制約から仕方がないことだが)各論への詳述が足りなさ過ぎ、と言うことだった。
2回に渡って「個人的所見」を述べてはみたが、何となく終えた感じがしない。
夏の間は放置していたが、ここらでちゃんと締めくくりたいと思う。
最後に筆者が試みたことは、もう少しスミス自身について知り、また聞いてみたい、と言うことだった。
幸いゴードン・T・スミスは自身のHPを持っている。
動画の方は「回心」に関連しそうなものは見つからなかったが、音声ファイルの中に適当なものがあった。
The Conversion Experience and the Intellectual Vocation.
この講演では特に知識人の「回心体験」を自伝的にか伝記的にか「ナレーティブ」として残されたものを丹念に追跡し分析を加えている。
古典的なオウグスティヌスやジョン・ウェスレー、幾らか最近では、G・K・チェスタートンやC・S・ルイス、もっと最近ではヒトゲノム解析を指揮したフランシス・コリンズらの名前を挙げているが、実際に論評しているのは次の4人である。
1. ブレイズ・パスカルスミスは「仕事として」沢山の「回心体験物語」を読むと言うが、これらの知識人たちの「知的問題を含んだ霊的遍歴」から「回心」と言う、個々人にとってはユニークな体験でありながら、神学的に見た「共通要素・過程」を跡付けられるのではないか、と言っている。
2. シモーヌ・ヴェイユ(彼女の場合はキリスト者への回心は未完であった。)
3. George Grant
4. Paul Williams
なるほどこれを聞くと、スミスはこの小論において、ただ色んな人物の名前を挙げているだけでなく、「回心体験」を学際的にしかし統合的に捉えようとしているのかが窺い知れる。
スミスは思いの外雄弁であったし、よくリサーチしている、と言う印象を受けた。
「福音派のパラダイム・シフト」と言うネーミングはちょっと眉唾に聞こえたかもしれないが、肝心なポイントは、19世紀から20世紀のリヴァイヴァリズムの「回心」を導いたり(「四つの法則」「爆発する伝道」)、あるいはそれによって得られた体験を記述した言語は「型枠」で限られていて、「回心」における知的・霊的複雑さや深さを捉えきれない・・・と言うことを実証したかったのではないかと思う。
少し乱暴にまとめれば「回心体験」とは、実に霊的に深い体験だ、ということだろう。
自身の体験としてこの講演の中でも語っていたが、1970、1980年代「回心」を神学的に講義するための教科書はリチャード・ラブレースのものしか見当たらなかったが、1990年代以降どんどん面白い研究が出てくるようになった、と述懐している。
スミスはどうやら「体験」の神学の可能性と有用性を提唱しているようだ。
と言うわけで、8回かけたこのシリーズもこれにて終幕としよう。
お付き合い下さった読者の皆様に感謝。
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