2013年6月20日木曜日

神学遍歴⑧

プリンストン神学校時代で忘れてならないのは、神学校の方だけではなく、プリンストン大学での聴講だった。

当時博士課程にいたC・Sさん(現在は某キリスト教系大学の教授であり、政治思想・政治学の方面では著名な方になった)から奨められて、Sheldon Wolin教授の大学院ゼミに入れていただいた。



シェルドン・ウォリン教授には、 Politics and Vision(邦訳書は『政治とヴィジョン』福村出版、 2007年)と言う名著があるが、本の中でプラトン、マキャベリ、ホッブスらが独立して1章が与えられている。

全10章のうち、それら3人以外にもう2人取り上げられているが、それは誰だと思いますか。

何とマルチン・ルターとジョン・カルヴィンです。

普通の政治思想史とは結構趣を異にすると思いませんか。(専門ではないので個人的な感想ですが。)

ウォリンについて忘れてならないのは、彼が米国にフランクフルト学派の思想を紹介した主要人物の一人であることでしょう。

ちょっと今名前は思い出せないのですが、ウォリンが編集していたか、主要寄稿者の一人だったかなりリベラルな雑誌があり、そこでハバーマスを紹介したり、論評していた記憶があります。
1980年代の話ですが。

イントロが長くなりましたが、とにかく彼の大学院ゼミを取ったわけですが、その年は「ジョン・ロック」がテーマでした。

副読本が何冊かありましたが、もちろんロックの本も何冊か入っていましたが、研究書として、John Dunn, The Political Thought of John Lockがありました。
260ページほどの本ですが$34.95もしました。

当時の筆者にとっては目玉が飛び出るような値段です。
本格的な研究書というのはそういう値段するんだー、となんかびっくりしたり感心したり。でも渋々買ったのを覚えています。

学院生が10人未満の小さなゼミで、政治思想初心者の筆者にはとても難しかった。

ただ凄かったのはウォリンのレクチャーと言うか語りと言うか、90分殆んどノートも見ずに、滔滔と水の流れる如く淀みなく議論が展開されるのです。

不思議なのは本来初心者には難しくてついて行けないはずなのですが、その思考の明晰さと入念に積み重ねられた議論の緻密さの故に、頭にスムースに入ってくるのです。(ノートも結構取れました。)

もちろん今ではその内容は忘れてしまいましたが、何でこんなに聴きやすいのだろうと驚いた記憶があります。

でもさすがにレベルが高すぎて何ヶ月か聴講した後に、もうこれ以上ついていくのは無理ですと、丁重にウォリン教授にお礼を言って聴講をやめました。

でもウォリンの存在感と言うのはプリンストン時代の貴重な体験の一つです。

なんかここまででもう1回分になってしまいましたので、もう一人のプリンストン大学の名教授の一人、ポール・ラムゼイ教授のことは次回に回します。

(て言うか、正直言うと、一度に名教授二人について書くのは大変だからです。笑)

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