2013年8月18日日曜日

(4)カトリックと聖書⑤

少し間が開いてしまいました。

『信仰年』ーー聖書を取り戻した公会議  (2013年6月)「聖書を敬遠していた教会」部分の引用が終わったところです。
次の最後の部分は2回に分けたいと思います。

では先ずは引用から。
神との出会いの場
 このような状況に対する危機感は、すでに公会議前からあり、新しい聖書解釈の方法が徐々に取り入れられるなどしていましたが、公会議はもっと明確に、また本格的に、ミサや神学を含む教会の生活や、また信徒一人ひとりの生活の中に聖書を取り戻すことを決めたのです。
 公会議は、まさに『神のことば』(邦題『啓示憲章』)と題された文書の中で、聖書が(聖体とともに)神と私たちの出会いの中で中心的な役割を果たしてい ることを確認しています。聖ヒエロニムスを引用して「聖書を知らないことは、キリストを知らないこと」(25項)だとする公会議は、信徒が聖書に近づきやすくなるよう、またそれによって養われるよう、聖書の研究、翻訳、朗読、また祈りとともに読むことなどを奨励しています。
先ず言及されている『啓示憲章』ですが、ちょっと調べてみました。

和田幹男神父による、第2ヴァティカン公会議 概説、に憲章(Constitutio)として出されたものが四つあるそうですが、そのうちの一つが、
2) 神の啓示に関する教義憲章(Constitutio Dogmatica de Divina Revelatione Dei Verbum):DV、『デイ・ヴェルブム』、または啓示憲章と略す。
だそうです。
和田氏の文章は以下のように続いています。
 第2ヴァティカン公会議で、教会は現代の世界の中で何を、 いかに行動すべきかを総合的に見直して、それに適応した体制をとろうとした。 その現代化にこそ、その目標があった。
「現代化」と言うことはプロテスタントの筆者もこの会議の持つ意義としては一応弁えているつもりでしたが、次の部分は少し驚きを覚えました。
当時よく用いられたアッジョルナメント (aggiornamento)という言葉がそれを的確に表現している。この現代化は、 その後も常に行われなければならないもので、同公会議は教会をこの現代化の動きの中に送り込んだのだった。 当時よく言われたもうひとつの言葉、「教会はたえず改革されなければならない」 (Ecclesia semper reformanda)が、このことをまた的確に表現している。実際に、これは現在のわれわれの耳にも新鮮に響くではないか。同公会議は、そのためにまず教会とは何なのか、その本質をその源泉に戻って問うた。 その源泉とは教会の創始者イエス・キリストであり、その心にあったものを証しする聖書である。
Ecclesia semper reformandaってプロテスタントの原則と同じこと言ってるじゃない。

このように教会が自己を見直して、まとめたのが教会憲章である。この教会の内省を前提として、 教会がその外に向かって、現代の世界に何を、いかに行動すべきかをまとめたのが現代世界憲章である。 ここに示された教会の行動原理は世界各地で実行に移されたが、目標としたものからはほど遠い。 それに当時予測できなかった新しい諸問題が世界のいたるところで起こり、 これとの取り組みが新たな課題となっている。遺伝子操作、臓器移植、 人口の移動と諸民族、諸宗教の共存、兵器と通信手段の革新、 いわゆるグローバル化に伴う経済的、社会的悪弊、それに環境破壊と問題は多様化し、深刻化している。 同公会議は、教会の自己反省と行動のすべてが聖書に基づいているので、あらためてその聖書とは何なのかを問うた。 その聖書は広く神の啓示の中に位置づけられるので、この啓示とは何なのかをあらためて問い直し、 こうしてまとめられたのが啓示憲章である。
どこまでプロテスタントの神学的取り組みと並行しているのか、注意深く見る必要はあるが、もし誰が書いた文書か言わずに読まされたら、殆んどプロテスタントでも違和感なく受け入れられるものではないだろうか・・・。

もちろんプロテスタントの聖書観の方が、「聖書主義(ビブリシズム)」に傾く傾向はある。
聖書解釈の実践においても「理性」や「教理的伝統(信仰告白文書)」の影響に対して概して無自覚である・・・と言えるだろう。

そういう点は留保しても、これだけ「聖書」を教会の自己把握と実践の中心に据える「取り戻し」は画期的との印象を覚える。

(※[続]ウサギの日記、と言うカトリックの谷口神父と言う方が「急速にプロテスタント化するカトリック教会」を1~5で連載記事を書いておられる。筆者が注目した「聖書」を回復する動きとは別な視点からのカトリック教会の「プロテスタント化」を書いておられる。筆者の連載とは直接繋がらないが、合わせて読んでも「現在のカトリック教会の置かれた歴史的位置」を知るのに参考になるかもしれない。)

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