2014年5月9日金曜日

(5)トマス・C・レーマー教授講演会

今日ICUでの講演会へ行ってきた。

元はと言えばこのツイートが始まり。

もしかしたら面白いかも・・・と思って早速サーチしてみたが、値段を比較したら英訳書より邦訳書の方が幾らか安そうだったので、筆者としては珍しく「旧約聖書」関連の「邦訳書」を入手することにした。(筆者にはこれでもかなり高い!)

しかし、と言うかやはり、入手後積読状態になっていた。

今年に入って少し4月付近から余裕が出てきたところでパラパラと読み始めていた折、このツイートが。


で行く前に、少しコレージュ・ド・フランスのウェッブサイトでレーマー教授のご講義をうつらうつらしながら聴いてみた。(今日、本人の英語を聞いて、やはりこちらのサイトでの英語は別の人のものだと思った。)

講演のタイトルである、Dark God: Cruelty, Sex, and Violence in the Old Testamentは既に英訳されて昨年発売になっていた。(アマゾン北米、なお簡単な要約書評。さらに講演での「性(ジェンダー)」に関わる唯一神観の問題と講演タイトルにある「ダーク」に関してはレーマー教授の論文が別にあり、ここで要約と論文を入手できる。これもかなり刺激的。)

講演はそのダイジェスト版のようなもので、パワーポイントのプレゼン資料が用意されていた。(後でネットで提供されると聞いた。)

このようなタイトルの本が刊行される背景としては、脱キリスト教文明のヨーロッパにあっても、「暴力」と繋がる「ユダヤ・キリスト教神観」を提示する(旧約)聖書は放っておけないらしい。

最近でも英国の「急進的」福音派と目されるスティーブ・チョーキが「刑罰代償説(penal substitution)」を、"cosmic child abuse"、と表現して北米ニオ・カルヴィン主義者たちの顰蹙を買った。

詳細は今後ネットに紹介されるだろうプレゼン資料に委ねるとして、筆者のざっくりとしたレーマー教授の研究態度や業績の初期印象を述べる。

現在ヨーロッパで、しかもコレージュ・ド・フランスのような高等研究機関で、聖書学「だけで」研究を続けるのは大変なことなのではないか。

先に紹介したウェッブサイトの講演題を見ても、如何に現代人に関心を持ってもらえるか、その切り口を工夫しなければならない状況、を感じた。

かと言ってレーマー教授が興味本位に研究していると言うことではなく、むしろかなり幅広く、横断的に資料や情報を整理して著作や講演にまとめている。その点かなりコミュニケーション能力が優れている。

古代中近東の文献や考古学的業績を渉猟しながら、現代人に関心持てそうなものを上手く救い上げて提示してくる。

その時の聖書解釈の視点が、時にやや強引に感じなくもないが、とにかくチャレンジングな視点を提供してくれる。

今回の講演における「性」や「暴力」は、しかしレーマー教授が開拓したのではなく、読者からの要請でまとめたのだと言うことだ。


とにかく旧約聖書の編集史(マルティン・ノートの学説の現代的適用可能性の見極め)から始まり、新たに発掘される情報を総合しながら、幅広く「ヘブル語聖書」の歴史と世界を「解釈学的にチャレンジングな形で」提示してくれるレーマー教授は、キリスト者向きと言うより、より一般(大衆)読者向き、の文脈にいるのかもしれない。


その点は本人自身の信仰の保守性はさておき、新約聖書学におけるリチャード・ボウカムの博識と学問的業績に似ているかもしれない。


質疑応答の時間の途中でICUの知人と会うため退席したが、久し振りの緑豊かなキャンパスでののびのびした時間を楽しむことが出来た。

(次回は「トマス・C・レーマー教授講演会・補遺」とでも題して、この知人との話を記事にしたく思っている。と言うのも筆者にとってはこちらの方が内容的に刺激が多かったからだ。)

1 件のコメント:

  1. 現在サンディエゴ市で開催中の北米聖書学会でレーマー教授がプレゼン中。
    著名聖書ブロガーのジム・ウェストさんがツイート中。
    https://twitter.com/drjewest
    http://zwingliusredivivus.wordpress.com/2014/11/24/romer-and-the-deuteronomist/

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