2011年12月25日日曜日

もろびとこぞりて

日本のキリスト教会で歌っている賛美歌は殆んどが欧米の作者のものを訳したものだ。
もちろんクリスマスの賛美歌もそうだ。

先日たまたまツイートで目に留まったのが
And Heaven and Nature Sing
と言う歌詞が入っている賛美歌「もろびとこぞりて」だ。

へー改めて考えてみるとクリスマス、御子の受肉を祝うのに「天も地も歌え」とはなかなか似合っているではないか・・・。
と、その時はそのままで止まってしまったのだが、段々クリスマス・イブの「お話」を準備しているうちに、この賛美歌が気になり、それとなくネットを使って調べ始めた。
日本語の「もろびとこぞりて」ではなく、英語の、Joy To The World、で調べ始めたのだった。

ところで筆者の教会で使用している讃美歌集、「インマヌエル賛美歌」では「もろびとこぞりて」は以下のような節と歌詞になっている。
①もろびとこぞりて むかえまつれ  ひさしくまちにし
主はきませり 主はきませり 主は主はきませり
②くろがねのとびら うちくだきて とりこをはなてる
主はきませり 主はきませり 主は主はきませり
③とこやみの世をば てらしたもう  あまつみひかりの
主はきませり 主はきませり 主は主はきませり
④しぼめるこころの はなをさかせ めぐみのつゆおく
主はきませり 主はきませり 主は主はきませり
⑤あまつかみの子と いつきむかえ すくいのぬしとぞ
ほめたたえよ ほめたたえよ ほめほめたたえよ
ところがJoy To The Worldの歌詞はと言うと、
Joy to the World , the Lord is come!
Let earth receive her King;
Let every heart prepare Him room,
And Heaven and nature sing,
And Heaven and nature sing,
And Heaven, and Heaven, and nature sing.

Joy to the World, the Savior reigns!
Let men their songs employ;
While fields and floods, rocks, hills and plains
Repeat the sounding joy,
Repeat the sounding joy,
Repeat, repeat, the sounding joy.

No more let sins and sorrows grow,
Nor thorns infest the ground;
He comes to make His blessings flow
Far as the curse is found,
Far as the curse is found,
Far as, far as, the curse is found.

He rules the world with truth and grace,
And makes the nations prove
The glories of His righteousness,
And wonders of His love,
And wonders of His love,
And wonders, wonders, of His love.
あれっ、節数も歌詞の意も違うじゃないか・・・。
よく見れば「もろびとこぞりて」の原詩は、Hark, the Glad Sound!となっているではないか。
Joy To The Worldを原詩とする日本語賛美歌は「たみみなよろこべ」となっていて、すぐ隣にあるではないか。
なーんだクリスマスというといつも「もろびとこぞりて」を歌っているので、Joy To The Worldの訳詩だと勘違いしていたわけだ。

と言うわけでネットでJoy To The Worldをリサーチしてみると結構面白いことが分かった。
先ず著名な讃美歌作者、アイザック・ワッツのこの賛美歌はもともとクリスマス賛美歌ではなかったのだ。
彼は詩篇を題材にした讃美歌集を作ったのだが、そのうちこのJoy To The Worldだけが、それも歌詞の半分だけが辛うじて忘却から免れたのだと言う。

背景となっている詩篇は98篇。特に後半部分が歌詞に反映している。
全地よ、主に向かって喜びの叫びをあげよ。歓声をあげ、喜び歌い、ほめ歌え。
琴に合わせてほめ歌え
琴に合わせ、楽の音に合わせて。
ラッパを吹き、角笛を響かせて
王なる主の御前に喜びの叫びをあげよ。
とどろけ、海とそこに満ちるもの
世界とそこに住むものよ。
潮よ、手を打ち鳴らし
山々よ、共に喜び歌え
主を迎えて。主は来られる、地を裁くために。主は世界を正しく裁き
諸国の民を公平に裁かれる。
ワッツはこの賛美歌を「初臨のキリスト」ではなく「再臨のキリスト」にフォーカスして作ったのだと言う。
思えばこの賛美歌にはクリスマスのエピソードとなるマリヤとヨセフや、天使の賛美(グロリヤ・イン・エクシェルシス・デオ)、羊飼いや東の博士などは登場しない。

しかしヨハネ福音書序のロゴス論にあるような創造主と共におられた御子イエス・キリストが被造世界に「来たり・宿る」と言うクリスマスの意義をよく表していると思う。
受肉の出来事ゆえに被造世界全体が賛美へと招かれるのだ。
まさにHeaven and Nature Singだ。

そして3節、4節の歌詞も重要だ。
罪と死の呪いの呪縛に繋がれている被造世界が再臨のキリストの時、ついにその枷から完全に解放される希望を歌っている。
神のキリストによる愛と正義と真理の統治が完成するのだ。

クリスマスは初臨のキリスト、受肉の出来事を祝うが、キリスト者は再臨のキリストにおいて完成する新天新地を展望しながらクリスマスの賛美歌を歌うのだ。
被造世界は既にキリストにある新創造に与っているが、しかし未だ完成までの産みの苦しみの中に置かれている。
そのうめきと共に人類と被造世界全体の回復・癒しを予感しながら希望に溢れて私たちは賛美するのだ。

(※讃美歌の背景については英語ウィキ記事ここ、やここを参照。)

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