酷暑も過ぎ、ようやく、と言うか急に秋になった。
秋と言えば、食欲、行楽、そして読書。
やっと本に手を伸ばすのが億劫でなくなった。
今日は読書の話題二つ。
Owen Barfield (1898-1997)
今読んでいるのは「ワールズ・アパート(Worlds Apart: A Dialogue of the 1960's)」。
邦訳はないようです。
しばらく前のブログ・ポストで「科学と信仰」のようなテーマのものを書きましたが、まさにこの本はそんな関連の本。
フィクションです。
ナレーターは、バージョン(言語学に関心のある法律家、と言うことは著者バーフィールド自身の投影)。
他に登場する対話者は、ハンター(神学者)、レンジャー(ロケット研究所員)、ブロディー(物理学教授)、サンダーソン(隠退した校長)、アップウォーター(生物学研究者)、ダン(言語哲学者)、そしてバローズ(精神分析医)。
これらの人たちが「三日間」に渡り、宇宙の進化、生物の進化、精神、意識と無意識、感覚・知覚行為と外的世界の関係、などなどを討論する、というもの。
興味深いのは、それぞれが専門的知識を持ちながら、専門外の領域、しかし関心事についてどのように対話を組み立てていくか、と言う思考(試行)錯誤の過程。
討論参加者はそれぞれ知的関心は高いが、かといって議論はそう簡単に進展しない。少し組み上がったかと思うと、別な問題が持ち上がり、その分析を始めると、また別な課題が出てくると言う、スパイラルな思考循環の繰り返し。でもそれがソクラテス的な前提の突き崩し、知識・思考の根拠を掘り下げる知的運動の活写になっている。
現在「三日目」の討論に入ったところ。果たしてどこか結論めいたところに到達できるや否や・・・。
同著者の、Saving the Appearances: A Study in Idolatry も読みたくなって本棚のあっちこっちを探し回っているが未だに捜索中。どこかに埋もれてしまっている。残念。
このバーフィールドと言う人は、ウィキペディアで調べてみたらC・S・ルイスの友人であり、J・R・R・トルキーンやT・S・エリオットにも影響を与えた人だそうな・・・。自身はルドルフ・スタイナーの影響を受けているのだとか。そう言えばスタイナーの名前出てきたっけ。
なぜ筆者がこんなオタクの様な著者の本を二冊も持っているのかって?
答えは筆者が真面目な留学生ではなく、遊学生だったから。
勉強そっちのけでキャンパス街の古本屋をはしごするのを娯楽にしていました。
特に、バークリーは立派なビルの古本屋から、間口の狭いかび臭いにおいのするみすぼらしい古本屋まで、10軒くらいあったろうか。それぞれ品揃えに特徴があった。
何が魅力かって、先ずその値段の安さ。
例えば出版時の値段が一ドルだとすると、現行価格に直して古本価格を設定するのではなく、出版時の価格を半額とか四分の一の価格にしてしまうこと。
英語の本は学術書のペーパーバックが多いので、適当に著名な本が25セントくらいで結構買えてしまうからたまらない。もうお宝探しの世界でした。
おかげで遊学を終えて帰国する時、半端じゃない量の蔵書を段ポール箱に詰めて船便に出すことになりました。全部本棚に並べられないので、ダンボール箱に眠っているのものも結構あります。いつかは日の目を見せてあげたいのですが・・・。
とまあ、そんなわけで自分の専門とか殆ど関係なく、面白そうな本で安い本は買いまくった結果、バーフィールドの本を手に入れるようになったわけ。彼の著書は確か文芸批評学コーナーあたりに並んでいたものと記憶している。
それでは皆さんも良い読書の秋をお過ごしください。
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