一つは神学校の入学条件に「洗礼」や、(よくは知らないが)「献身している」とかがあるためか、と思う。
しかしキリスト教主義系大学を除けば、世俗の大学で「キリスト教神学」や神学緒科を学べる場所はそうないだろうから、将来牧師や伝道師などの専門職に入らない人(例えば一般信徒や関心の高い人)も学べるような環境に変えて行く事を少しは考えてみても良いのではないか、と思ったりする。
このクリスチャニティー・トゥデー誌記事によると、今や牧師などの専門職につく人のための学位プログラムである「マスター・オブ・ディヴィニティー(M.Div.)」取得者で、実際にそのような職につく人の数はどんどん減って全体の4割程度となっていると言う。
筆者が取得した頃はほぼ9割がたは「ミニストリー」に入っていたと言うわけだから、神学校を取り巻く環境は大きく変わったのだろう。
さて(カナダを含めた)北米神学校事情を知るためには、神学校の認証制度を知らなければならない。
日本では数年前、某福音派神学校が大学院設置を巡って一苦労したことがあったが、学位がどのように認められるかに関し、日本ではキリスト教主義大学(同志社、関西学院、など)のように文科省経由と、北米のように独自で認可機関を作ってやる場合と、二通りあることになる。
問題は後者の場合、認可機関に所属する神学校の数が少なく、神学校自体も弱体な場合、そもそも何をどう認可するかの枠組み作りと審査プロセスをそれほど念入りにはできない面がある。
専任教員数や施設、図書館、蔵書数、学位数、履修過程、などなど相互に厳しい基準を出すだけの体力はないであろう。仮に作ったとしても、どれだけ厳しい審査を課すことができるだろうか。
多分そんな背景もあって、特に博士課程まで考えた場合、どうしても文科省経由の認定機関による承認を求めることとなったのであろう。
北米の話に戻るが、殆んどの神学校(大学に属する神学部も含む)が所属するのが、The Association of Theological Schoolsだ。
現在270校所属している、とあるがそれだけの数の機関であればこそ認可プロセスにもそれなりのコストをかけられるわけだろう。そして一定の基準を保持することが認可の意義だから、審査のための訪問がある時は何かしら緊張が走った記憶がある。
このATSが毎年統計を出しているが、この年度別統計データが半端ない。
筆者はアズベリー神学校卒だが、当時から(30年以上も前)福音派神学校は学生数を毎年伸ばし、数を競っていた雰囲気があった。
当時も今もフルタイムの学生数順位はほぼ変わっていない。南部バプテストの巨大校を除けば、フラー、トリニティー、ダラス、ゴードン・コーンウェル、の後にアズベリーが来ていた。一応10位以内だ。
しかし今や事情は大分変わった。ゴードン・コーンウェルは結構頑張っているが、トリニティーやダラスは後退している様だ。
もっと大変なのは南部バプテストの巨大神学校だ。いちいち名前を挙げないが、6校あるうち絶えず上位を競っていた神学校がかなり生徒数を落としてきている。
その中でも最近の傾向として現れているのは、「急進カルヴィン主義」に変革しようとしているSouthern Baptist Theological Seminary や、Southeastern Baptist Theological Seminaryの方が、カルヴィン主義を取らない他の南部バプテスト神学校と比較して減少数が多い、と言うことだ。(この記事)
さて細かいことは省略し、少し大きな「神学校事情」を取上げると、一つは主流派の神学校の統廃合問題がある。そしてこれがなかなか上手く行っていないようだ。
お金のかかる神学校教育を経ても、着任する教会がどんどん小さくなっていることは、神学校に行こうとする志気を鈍らせる。しかし教会同士が統廃合し、新任牧師をより厚遇できる態勢を取ればいいと言っても、教派間の壁はそうそう越えられるものではない。(その辺の事情はこの記事や、特にこの記事)
まだ記憶に新しいリーマンショックは
しかしその間は教員数を減らしたりリストラをせざるを得なかったわけだ。
メインラインに限らず福音派教会の教勢も今後減退する方向と見られるから、拡大拡張路線を取ってきた福音派神学校は、今後入学者数が減少して行くと、経営的にまた苦しい場面も出てくるだろう。
そんな中での面白いことは、ATS加盟校数は減少に転じないで、増えているという点である。
その要因は何かと言うと、①韓国系移民のキリスト者人口が多いことによる牧師教育の必要、新学校の創設、と言う動きや、②司祭数が頭打ちなカトリック教会で信徒の神学校教育が拡大に繋がっている、と言う点だ。
色々な光と影があるものだ。
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