2014年4月16日水曜日

(5)主に神学ブログ⑦

 こちらのシリーズも大分更新が停滞している。

 今回紹介するのは今最も旬な話題を取上げ、それを「サタイアー」を効かせた小説の形で表現し、しかも矛先を「キリスト教会の牧師養成問題」としてパロディー化すると言う、結構念の入った記事を発表し終ったところのブログである。

 伊那谷牧師の雑考は、日本同盟キリスト教団伊那聖書教会の大杉至牧師のブログ。

 大杉牧師とはツイッターで相互フォローしているが、自教会と教団の仕事でお忙しいのか、余りツイートにもお目にかからないし、ブログの方も(ちゃんと定期的に巡回しているわけではないが)それほど更新がなかったように記憶する。

 それなのに2014年4月、一挙にブレークしましたね。

 小説 冲方晴男(うぶかたはるお)牧師 1

 実は少し遅れて読ませていただいたのですが、改めて大杉牧師が「生命科学研究者」として仕事をしておられたことを再確認させられました。

 たまたまと言うわけではないですが、今回のオボカタ事件に関し人並み位の興味しかなかったのですが、伊那谷牧師の次の記事で眠っていたものを少し覚醒させて頂きました。

 問うべきこと

 筆者のアズベリー神学校時代の話、神学遍歴⑥、でも書いたように、「キリスト教倫理」のクラスで遺伝子操作技術(リコンビナントDNA)について小論文を書いたのですが、その後いわゆる「生命科学倫理(bioethics)」については休眠したままになっていました。

 今回の伊那谷牧師の記事で少し目が覚めた感があり、以下のようなコメントを書かせていただきました。
 多分初コメントとなると思いますが、一言。
 ご指摘の通り様々なレベルでの問題を内包していることはある程度分かります。(生命科学者や、牧師や、様々な立場で、この問題が孕む哲学的・神学的・倫理的含意を類推できる範囲は異なりますが。)
 一般に先端科学は倫理的問題(それが問題として構成されるにはそれなりの哲学的・神学的掘り下げが必要になりますが)を解決してから次に進むと言う手順を待ってはいられないと思います。
(その時々の大枠は作られますが、それは絶えずそのような実験が可能になったり、実施されたりしてから後になってしまいます。)
  やはり「科学者」と「哲学・神学・倫理学者」との不断の対話、情報交換、さらには受益者となる「パブリック」との間の橋渡しをする役割(の人たち、やはり 一種の専門家)が確立して行かないと、今回のような「周辺的な話題」が先行して報道され、問題の核心にまで立ち入らないまま問題が雲散霧消、と言うことに なる恐れは十分あるのだと思います。
現在の生命科学の技術についてはおよそ門外漢となっている筆者が下手なことを言うことは出来ない。今の段階では筆者は「パブリック」の一人、マスメディアに煽られる一人に過ぎないのである。

 しかし、今日理研の笹井会見が行われている時、イトケンさんのツイートではっとさせられた。

 このSTAP細胞技術が生命倫理問題にどの程度関わっているのか、上のコメントではただ漠然と感じていたものが、このツイートで「至近距離に来ているかも」との予感がしたわけである。

 筆者の印象ではメディアは実験過程や結果についての様々な疑惑については識者のコメントを求めているが、この細胞生成技術の生命倫理的側面については殆んど追跡していないように思い、早速

 stem cell research obokata ethical question
でググってみた。

 今のところ目ぼしいのはこれだけか・・・。
 Why Easy Stem Cells Raise Hard Ethical Questions

Yet these cells have a troubling potential. One of the surprising features of these cells, which Obokata has called “stimulus-triggered acquisition of pluripotency” cells, or STAP cells, is that they are not only able to develop into all embryonic tissue types—they can also contribute to the development of a placenta. Neither embryonic stem cells nor iPS cells can develop into placental tissue. In fact, this has often been seen as a defining difference between embryonic stem cells and actual embryos: embryonic stem cells cannot, on their own, develop into adult organisms the way an actual embryo can, in part because they cannot grow the extra-embryonic placental tissues needed for fetal development in the womb. If STAP cells can indeed support fetal development, clusters of these cells may actually be embryos. If so, the creation of these cells would be tantamount to human cloning.

But the wide range of developmental potential these cells have does not necessarily make them embryos. There’s an old motto in biology, attributed to the great seventeenth-century anatomist William Harvey: “omne vivum ex ovo,” or “all life from eggs.” In the animal kingdom, this doctrine still holds true; embryos are fertilized egg cells, and the egg cell provides a great deal of material necessary for the embryo’s early development. Just because an adult cell has been “reprogrammed” to a state of developmental immaturity that allows it to branch off into any of the different cell lineages, that does not mean that it will be able to undergo the highly coordinated development of an embryo on its own, or even together with other such reprogrammed cells.

We should still take the possibility seriously, however, that this new method of reprogramming might make embryos. Rumors are already circulating that scientists have attempted this in mice. According to a story in the New Scientist, one of the co-authors of the study, Charles Vacanti, said that he asked an unnamed collaborator to transfer a spherical cluster of STAP cells to a mouse. Vacanti reports that the cells began to develop as a fetus, but that halfway through the pregnancy, the fetus stopped developing normally. According to Vacanti, “There was some sort of glitch—which is probably a good thing due to the ethical issues that would occur if we were able to create a live clone.” But if it is true that these cells are able to develop as embryos, then the fact they develop defectively is not reassuring. Okotaba, for her part, said that her team was interested in regenerative medicine, not human cloning.
昨年5月、既にクローニング技術で人のES細胞形成が成功している(らしい)ことがネーチャー誌に報じられている。


 はてさて現在クローニング技術でES細胞などを作っている研究者たちは「冒険家(ヴァカンテイー)」な面を持っているかも・・・だったり、「先生には内緒でクローンマウスをつくってい」た、理研の若山研究員の話を聞くと、倫理的な資質に???が感じられ、少し恐いシナリオもあり得るのかな、と思ってしまうのであった。

 とにかくキャッチアップ(する気があるかは分からないのだが)が大変そうだ。

2 件のコメント:

  1. 「伊那谷牧師」こと大杉です。拙ブログを取り上げてくださりありがとうございます。STAP細胞論文は、私の細胞生物学の好奇心と生命倫理の不安感を刺激し、ブログ更新意欲を惹起させてくれました。刺激惹起性ブログといったところです。私の検索した範囲では、生命倫理の観点からSTAP細胞について論じたネット記事は見当たりませんでした。検索したのは日本語に限りますが。私は英語が苦手でして、英語圏のブログをほとんどチェックしておりません。ですから小嶋先生がブログで英語圏の話題を紹介してくださるのはありがたいです。

    その英語の記事で下線を引いておられるように”the cells began to develop as a fetus”の知らせを私もネットニュースで知り、直観的(直感的)に危機感を持ちました。著者のB. Foht氏も問題を感じて記事にしたのでしょう。そして小嶋先生もそこにお気づきになられたのですね。これは危ない話です。そうした危ない話が話題にならずに、周辺的な話題でかき消されてしまっている現状があるわけです。そして周辺的な話題に煽られているのが牧師や神学校教師たちだったりするので、やれやれと思うわけです。STAP細胞や小保方氏に対する同情的な声は、牧師たちをはじめとするキリスト者の中にもあります。そうした声からはSTAP細胞の有益さへの期待は聞こえてきても、生命倫理問題への懸念はほとんど聞こえてきませんでした。そのことに少し寒気がいたします。せめて少数でも何かの声を上げる必要はあると思っております。小嶋先生の直観と洞察に期待いたします。

    そういえば先生はアズベリーでリコンビナントDNAについての論文を書かれたのでしたね。その記事を読み私も「ジャック・エリュール」について関心を持ちましたが、いまだに読みも買いもしておりません。今度読んでみようかと思います。もし小嶋先生がよろしければ「ジャック・エリュール」についてもブログで紹介していただければ感謝でございます。
    長々としたコメント失礼いたしました。

    返信削除
    返信
    1. 大杉先生、
      (初?)コメント、それも丁寧な、ありがとうございました。
      何と1年以上も経ってから気がつくという超ウルトラ「遅ればせ」リプでした。

      実は「ジャック・エリュール」について書こうと思いつき、過去ログ点検して今回の発見となりました。
      重ねて感謝。

      削除